私達が、創業してお金の問題に直面した場合、とれる行動には
1)出資者(投資家)を探して、出資してもらう
2)誰かから借りる
3)お金のかからない策をとる
という方法があり得ます。
しかし、それぞれにはメリット・デメリットがあるのでよく考えて行動していく必要があります。
1)出資を考える
まず、1)出資者(投資家)を探して、出資してもらう、という方法があります。「投資」してもらうということは、あなたの会社の「株式」を取得してもらうことになります。それは、すなわちあなたの会社の株主になってもらうということを意味しています。
株主になってもらうということは、どういう種類の株式を発行するかということも関係しますが、原則的にはその株主はあなたの会社の所有者(部分的な所有者)になるということです。
あなたの会社の持ち主ですから、当然ながら、あなたの会社の行く末に対して何かを言うこともできますし、一定の権利を保有しています。どのくらい株式を持っているかによって、どういうことができるかは決められています。
あなたの会社の情報を請求することができたり、あなたが会社について重要な決断をするときにストップをかけたりもできる状況もありえます。例えば、会社の重要な資産を売却したり、そもそも会社そのものをM&Aしたりという決断の場合に、いろいろといってくる可能性もあります。持ち分次第では、それを止めることもできるわけです。
とは言え、株式を取得してもらうということは、借入とは違い返済する義務は負いません。(出資契約で、経営者に買取契約をいれられてしまうケースもありえますが、それは別な話です。投資を受ける時には、専門の弁護士にリーガルチェックしてもらうことをオススメします)
こういうことが起こり得ることをきちんと把握した上で、株式による資金調達は実行する必要があります。
2)誰かから借りる
次に、2)誰かから借りる、という資金調達の方法もあり得ます。
小さな会社にとっては、このやり方がもっともやりやすいかもしれません。では、誰から借りるのか、ということが次に問題になります。結論からいうと、貸し手と借り手であるあなたが納得できる内容ならば、貸し借りはできるわけですが、イキナリ知らない人が貸してくれるわけがありません。(もし貸してくれるとしても、そんなお金は借りたくありませんよね、、、。)
普通は、A)親兄弟や知人から借りるか B)金融機関から借りるか、ということになります。
A)親兄弟や知人から借りる のはいいのですが、もし返せない場合には、将来の人間関係に関わってきます。また、「貸してもらった」といいながら、実質的にはもらってしまっているというような場合には、税金の問題が発生する可能性があります。さらには、親御さんから、「借りた」(実質もらった)ような話が、なんとなく進んでいる場合には、兄弟との関係も合わせて考えるとややこしさが増大するケースもあります。「お金を借りれるかどうか」だけではなくて、そのまわりの人間関係と税金の話には、気を付けてください。
すると、王道は「銀行」から借りる、という話になります。とりわけ、「創業融資」ということを売りにしている金融機関もありますので、そういう融資商品やサービスを活用するということが現実的です。
銀行融資を受けるということになると、今度は途端に銀行が目に付くようになります。酋長企業がお金を借りることを考えた場合、銀行には、大きく分けて、メガバンク、地銀、信金信組、政府系金融機関という区分けがあります。(消費者ローンとかを使うという選択肢もゼロではありませんが、利息を考えるとあまり現実的ではありません)
3)どこの銀行を使う?
では、あなたはこれらの銀行のどこを選べが良いのでしょうか?
様々な考え方がありますが、銀行側の事情をある程度考慮すれば、あなたがどこの銀行と付き合っていけば良いのかは理解しやすくなります。それぞれの銀行の特徴と性格に加えて、あなたのステージを考慮することが必要です。
そもそも銀行のビジネスモデルを考えて見ると、お金を貸してそこから得られる利息の収入でやっていかないといけないという構造があります。(現在は、それだけではなんともいかず、保険や投資信託を販売しての手数料収入や、M&Aの仲介をすることによる手数料収入を獲得する努力もしています)
すると、銀行側の手間を考えるならば、できるかぎり一回の取引で沢山貸せる先があればその方が効率は良くなります。具体的には、担当の行員が貸しだし先を発掘して、経営者とコミュニケーションしながら情報を精査して、審査するためのベースとなる資料を作って、行内での審査を経て、、、、というフローを考えると、、、これで500万円貸すよりも、10億円貸せる先をやった方が、多くの収入(利息)を得ることができます。
この構造を前提にすれば、沢山貸せる元手をもっている銀行はなるべく一気に沢山貸せる先に貸したい欲求があることが理解できます。何度もこの流れをやって500万円を200社へ貸し出すよりも、一発で10億円貸した方が効率的です。
したがって、より体力の大きいメガバンクは大きく借りてくれる会社を優先したい傾向があります。一般的に、その体力はメガバンク>地銀>信金信組ですから、あなたがどのくらいの資金を借入のかで、付き合いをする銀行のことを考えておく必要があります。
銀行からすると、相対的に貸しだし先として規模が大きいのか小さいのかによって、重要度もあるはずです。そうなると、その重要度に応じて担当させる人も変えてくるかもしれません。その銀行で、エース級の人が担当してくれるのか、そうでも無い方が担当するかは、長い付き合いになる銀行との関係では結講重要です。
大口の資金需要がある取引先をメインと考えているメガバンクからすると、数百万〜数千万円の資金需要しかない先は、相対的に重要性が下がる可能性が高いと言えます。一方で、地域的な企業の支援を業務の中心にしている信金信組にとっては、小規模の事業者との付き合いを深めることが業務ですから、同程度の規模の企業でも重要な顧客となり得ます。
この銀行側のスタンスを考慮にいれて、お付き合いを始める銀行を決めることになります。まだあなたが創業してすぐくらいで売上が1億円に達していないくらいならば、会社か事業を展開している地域にある、信金信組に相談をしてみるのが王道だと言えます。
4)政府系金融機関との付き合い方
メガバンク、地銀、信金信組といった民間の金融機関との付き合いの前に、会社が小さい場合には政府系金融機関である日本政策金融公庫との取引を考えたことがあるかもしれません。政策金融公庫の国民金融事業は、私達小規模事業者にとっては非常に活用しがいのある融資商品が揃っています。とりわけ、創業したての場合には、まず相談すべき金融機関は、日本政策金融公庫であるといっても過言ではありません。いくつかの条件を満たす必要はありますが、無担保無保証での借入を行うことも可能です。
政府が創業者や開業者を増加させる方針をとっていることと相まって、日本政策金融公庫には、これからビジネスを始める、あるいは始めたばかりの事業者向けのものがあります。あなたの自己資金がゼロで貸してもらえるのかというと、ちょっと厳しいのですが、ある程度の自己資金をもってビジネスをスタートさせようとしているならば、融資の交渉はしやすいと言えます。
したがって、創業しつつあるタイミングで資金調達をする必要性があるならば、まずは日本政策金融公庫へ行ってみることをオススメします。
日本政策金融公庫はその使命から、あなたが小規模なビジネスを展開していること(あるいはその予定)は問題になりません。今後、独立して、「着実に」ビジネスを多きしていき、できれば「雇用を増やしていく」というようなことの方が重要です。(もちろん、借入をできる前提というものはいくつかポイントはあります)
日本政策金融公庫のこのような性質から、その他の民間の銀行とセットで借入を考えていくというやり方もあり得ます。日本政策金融公庫は、その立ち位置からいっても民間の銀行と一緒に融資活動をしていくことを希望します。したがって、創業のタイミングでは政策金融公庫に相談をして融資をしてもらい、次の年にもっと成長を飛躍するために融資を増やす場合には、信金信組に相談をするというのはよくあるやり方です。
設備投資などで多額になる場合には、日本政策金融公庫と民間の金融機関に同時に相談をもっていってやりたいことを実現する融資の獲得を目指すというやり方もありえます。
5)保証協会枠の存在
そして、中小企業が融資を獲得する際にあたまにいれておかないといけないのが保証協会の存在です。この保証協会保証付き融資をどこで利用するかというのをきちんと考えておくことが、今後の資金戦略上重要になります。
保証協会保証付き融資というのは、金融機関にとってはリスクを分散できるため安全性の高い魅力的な融資となります。融資先になにか会ったとしても、保証協会が一部を肩代わりしてくれるわけですから、貸付が焦げ付くリスクを低減させることができます。
保証協会の保証があれば、創業したての会社でもメガバンクから融資を受けることが可能にはなります。しかし、メガバンクからプロパーの融資を受けられる基準にない企業が、保証付き融資を利用した場合、メガバンクが相手をしてくれるのはあくまで保証がついているからです。したがって、いざというケースにプロパー融資をお願いしても、明確な理由を述べられないまま門前払いされる可能性があります。
しかも、保証協会枠というのには上限がありますので、その枠が残っていない状況で、これまでのお付き合いのないその他の民間金融機関へ相談に行ったとしても、信用実績が積み上がっていない状況でプロパーの融資がつく可能性はあまり高くないとも言えます。
このような状況があるという前提に立つと、将来的にプロパー融資を獲得するための信用保証協会枠の使い方を検討しておくことが重要です。
6)理想的な借り方
目標は、いかに早い段階でプロパー融資を獲得できるのかという点です。一部の会社以外は、どんな民間銀行であるといきなりプロパー融資を獲得できる可能性はそんなに高くありません。
一般的には
保証付き融資→信用形成→プロパー融資
という流れを経ることになります。
とにかく、保証枠には上限がありますから、プロパー融資を考えた割当を戦略的に構築しておくことをオススメします。