起業してからの5年で、80~85%の企業が倒産すると言われています。これらの失敗してしまう企業には、どのような特徴があるのでしょうか。また、失敗しないためには、どのような点に留意すればいいのでしょうか。
今回は、失敗してしまう起業家がやりがちな「危険度の高いビジネスプラン」によくある特徴を“あるある形式”でお伝えしていきます。また、ビジネスプランを作成するときに注意しておきたいポイントについてもご紹介いたします。これから起業を考えている方は、5年で会社をつぶさないためにも、ぜひご覧になってください。
失敗する企業がやってしまいがち!危険なビジネスプランあるある
① 理念がなく社外向けに数値ありきのプランを作ってしまい、数字を眺める憂鬱な毎日。
起業家A氏は、ひとまずベンチャーキャピタルや銀行から借り入れをするためだけに、数字ありきのビジネスプランを作成しました。そんな状態からいざ事業を立ち上げてみると、いつまでも自分がやりたいことやビジネスを通して提供したい価値とは無縁のままで、ただただ数字に追われる日々を過ごすことになってしまいました……。
■数字ももちろん大切ですが、自分が本気で実現したい事業やサービスを行えるビジネスプランになっているかどうか、見直してみましょう。
②リサーチをしっかり行っておらず、いざ商品を作ってみても誰にも必要とされずに終了。
起業家B氏は顧客ニーズを調査せずに、友人知人への簡単なヒアリングだけで商品を完成させてしまいました。勢いで起業してみたものの、実際に販売してみると顧客に見向きもされません……。
■「こんな商品があったらいいな」という思いと、実際にお金を払って利用することとの間には、大きな壁が存在します。リサーチによってそのギャップを埋める必要があります。ヒット商品や人気のサービスを作るためには、事前に入念なリサーチが不可欠です。
③“いい商品(サービス)であれば売れる”妄信プランを作ってしまい、売れる前に店じまい。
起業家C氏が作る製品は、素材にもこだわり、デザインも細部まで洗練されていて、本当に品質の良い商品。いい商品であれば、自然と口コミで広まると信じて、ほとんど営業活動を行っておらず、在庫が増えるばかり……。
■良質な商品に価値があるのは確かですが、たとえ良質な商品であったとしても、必ずしもそれが売れるとは限らないのが、ビジネスの難しいところです。見込み客に自社の商品を認知してもらうためには、マーケティング計画が必要です。
④突発発生コストを見落としているプランを作ってしまい、事業拡大のチャンスを逃す。
起業家D氏のビジネスは軌道に乗り、待ちに待った事業拡大のチャンスが訪れました! ところが、事業拡大にかかる突発発生コストに耐え切れず、またとない機会を目の前で逃してしまいました……。
■事業を大きくするためには、新たに人を採用したり、事務所を開設・移転したり、商品やサービスの値上げをしたりと、何かとコストがかかります。これらを甘く見積もっていると、キャッシュが足りず人も増やせず苦しい状態に追い込まれてしまいます。
⑤売れているはずなのにキャッシュフローが追い付かないプランを作ってしまい、黒字倒産まっしぐら。
起業家E氏のビジネスは、商品やサービスの売れ行きが好調で、このまま行けば会計上の収支は黒字のはず!と思っていたところ、キャッシュフローが追い付かないために、黒字倒産してしまいました……。
■企業には、商品の仕入れや従業員の給与などのお金が出ていくタイミングと、顧客からのお金が入るタイミングとがあります。このバランスを意識しておかなければ、たとえ黒字でも経営が立ち行かなくなってしまいます。ビジネスプランを考えるときは、資金繰りについても十分に検討しておきましょう。
⑥リスクマネジメントなしの超ポジティブプランを作ってしまい、いざというときにあたふた。
起業家F氏の会社が開発したアプリは中高生に非常に人気があり、このままサービスを継続していれば安泰と考えていました。しかし、新興企業が開発した類似のアプリの出現により、あっという間にシェアを奪われてしまいました……。
■環境の変化により状況が大きく変わることがあります。とりわけ、法改正や市況の変化、そして競合他社の出現といった外部環境の変化により、これまでは無事だったビジネスに、打つ手がなくなることもあります。周囲の環境の変化に対応できないビジネスプランでは、勝ち残ることができません。リスクマネジメントは前もって行っておきましょう。
5年でつぶれる企業にならないビジネスプラン立案のポイント
それでは、5年でつぶれてしまう企業にならないためには、どのような考え方でビジネスプランを作成すればよいのでしょうか? ここからは、失敗しないための立案のポイントをご紹介していきます。
ビジネスプランの役割は?
そもそもビジネスプランには、起業家の想いを形にして伝えるという役割があります。起業のタイミングだけでなく、ビジネスが軌道に乗ってからも、さまざまな場面において起業家の想いを伝え、周囲の協力を仰ぐことが必要になります。
ビジネスプランの例としては「事業計画書」が挙げられます。また、「企業理念」をはじめとした社長のメッセージも、ビジネスプランに基づいた内容となっています。
ビジネスプランは、投資や融資を依頼する資料に添付することもありますし、パートナーシップ関係など外部の企業に協力を求めるときに提出することもあります。起業家の想いと計画を的確に伝えるものでなければなりません。したがって、その内容は誰が見ても理解しやすく、かつ価値を認められるものとなっていなければなりません。
ビジネスプランを考えるうえで必要な<6W2H>の要素
① What
どんな商品やサービスを扱うのか、具体的な内容を示します。
② Why
起業家自身が、どうしてこのビジネスを行うのかを明確にします。また、このビジネスにどんな社会的な意義があるのかを説明します。起業家の想いを表す大切な要素です。
③ Where・Whom
このビジネスで参入する市場はどこか、また顧客は誰なのかをまとめます。具体的にターゲットを絞り込みましょう。
④ When
いつ資金や人が必要となるのか、タイミングについて説明します。これらを定めることにより、計画性が生まれてきます。
⑤ Who
計画を実現するにあたり、どの人物が何を行うのか、どんな人材が必要かを示します。また、人物の能力や経験、人数についても検討します。
⑥ How to
その商品やサービスで、どのように市場で勝ち抜いていくのかを伝えます。独自性や販売力など、商品の強みを生かすための手段が求められます。
⑦ How much
資金・売上高・利益はいくらくらいなのか、目標を提示します。どんなタイミングでどれくらいの資金が必要となるのか、具体的な数値を試算しましょう。
ビジネスプランを作るうえで留意すべきポイント
最後に、ビジネスプランを作るうえで留意すべきポイントをご紹介します。失敗しないビジネスプランを作るために、気を付けたいポイントをまとめました。
① 誰が読んでもわかりやすい文章表現
ビジネスプランを作成するときは、誰が読んでもわかりやすい文章表現を心がけましょう。たとえば、同窓会で会った異業種の友だちに「どんなビジネスをしているの?」と質問されたときの回答を考えてみてください。わかりやすい言葉で説明しますよね。ビジネスプランを作成するときには、ごく一部の人にしかわからない専門用語や難解な表現などは避けて、読み手の頭にすっと入る言葉で文章を作成するのがポイントです。
② 根拠のある資料による予測
説得力のあるビジネスプランに仕上げるためには、あくまで根拠のある資料をもとに予測を行ってください。たとえば、イメージだけで「××な人に売れるはず!」と断言するのは避けるべきです。まずは「△△という場所で、○○人から、××という反応がありました」といったデータを提示するとともに、根拠に基づいた予測をしましょう。
③ 事業リスクや問題点への対応策
良いビジネスには競合が存在します。また、法改正や市況の変化によって、新たに問題が生じるおそれもあります。このように、どんなビジネスにもリスクがつきものです。ビジネスプランを作成する際には、あらかじめ起こり得るリスクを想定するとともに、その対策についても明記しておく必要があるでしょう。
④ 起業家としての起業動機やビジョン
「そもそもどうしてこのビジネスを行うのか」という起業の動機や、ビジョンは、ビジネスプランにおいて重要なポイントです。とりわけ、ベンチャーキャピタルからの評価基準では、起業家の人物像が見られる傾向にあります。起業した動機やビジョンが十分に伝わる仕上がりになっているかどうかを、今一度確認してみましょう。
まとめ
失敗してしまうビジネスに共通するのは、自分に都合のいいところだけを見て、肝心のリスクについては十分に考慮されていない点にあります。どんなビジネスにもリスクはつきものですから、事前に想定して対策を考えておくことが不可欠です。ビジネスプランに必ず盛り込んでおきましょう。リスクマネジメントまで盛り込み、根拠まで書かれているビジネスプランは説得力を生み、信頼されます。
また、ビジネスを行ううえで、誰かの協力や助けが必要になります。そんなとき、起業家のビジネスへの情熱が伝わると、周囲の人々からの協力を得られやすくなります。ビジネスプランで、ビジョンを明確にしておくとともに、熱意も伝えましょう。読み手を意識して、伝えたい情報をわかりやすくまとめることが大切です。
これからビジネスプランを作成するときは、ぜひ今回ご紹介したポイントを参考にして、ビジネスをうまくドライブさせてください。