薄々感じているとは思いますが、起業した次の日から売上が堅調に上がり続けるということは、ほぼありません。
特殊なケースや、最初から取引先を確保できているケースでは例外的にあります。しかし、多くの起業家は、売上があがってきて、お金が入金されるまでに少し時間がかかります。
自分は実家に住んでいて家賃はとりあえずかからないし、生活のための水道光熱費もまぁなんとかなる。食費も、親に当面面倒見てもらえるので、なんとか生きていける、、、、、という条件の元でスタートする人もいるかもしれませんが、多くの場合、生きているだけでお金がかかります。
ギリギリまで切り詰めたとしても、家賃とか食費とか、、、生命維持のための最低限のお金は日々でていきます。それに加えて、新規に立ち上げた事業のためのコストが必要です。売上ついてくるまでは、先行してお金を払っていくことが必要になります。
ここで悩みとしてよくあるのが、「果たしていくらくらいお金を用意しておけば起業しても大丈夫なのか?」という点です。正直に言いますと、人によって生活スタイルが違うので、「◉◉◉円」あればOKですとは言えません。
以上です、、、、、では、ちょっと意味がないので視点を変えて考えてみたいと思います。
そもそもあなたのビジネスがどういうお金の流れを想定してるのか、これからサービスや商品の開発をするのか、それとも、提供するサービスはもう出来上がっているのか、、、などでだいぶ変化はしてきます。
そういう前提があるとしても、なんだかんだ言って売上がある程度見えてきて堅調な推移を確認できるまでには少し時間が必要です。この時間は、経験則に過ぎませんが半年くらいを想定しておいた方がいいと考えています。
もちろん、ラッキーもあり初めて1月目から順調に売上がついて入金もあるかもしれません。でも、あなたのビジネスがB2Bスタイルのビジネスならば、多くの場合請求書を出した月の翌月末入金というサイクルであるはずです。つまり、「売上あがった!」という時から、実際に銀行口座の残高に反映されるまでに1ヵ月あるわけです。
売上が上がる=手元の現金が増加する、ということではないことをよく覚えておいてください。多くの起業家はこの入金サイクルの罠を忘れがちで、資金繰りに苦しむことになります。
例えば、1ヵ月目に売上が上がってくるので、営業に積極的になって、追加に広告費をだしていくとします。しかし、次の月末にならないと実際に銀行口座は増えていないわけですから、追加で広告費を使っていくと、(広告費の支払いサイクルにもよりますが)手元の現金を減らす方向に働きます。
この「支払のサイクル」と「入金のサイクル」をよく把握しておかないと、「売上は上がっているのに手元の現金預金が足りない」という事態に陥ります。「黒字倒産」とまでなるかはわかりませんが、。相当苦しい状態です。
ここで、カードで決済することで、カードの支払サイクルを活用してなんとか資金を繋いだり、もう経営者が一旦会社の費用をたてかえたりして、乗り越えることになります。当然、ここで追加の広告費を諦めるという選択肢もありえますが、せっかく目の前のかなり確実性の高い売上がみえてきていると、起業家マインドがあると攻めたくなる方が多いのが常です。
こういう支払サイクルも相まって、なかなか資金繰り的には安定はしません。多くの場合、最初の計画通りに商品のリリースはできませんし、予期した程顧客が集まらない可能性があります。すると、経営者が取ることにしていた役員報酬を実際には受け取れないこともありえるでしょう。
「事業計画大事」なのですが、計画はあくまで計画ですから、だいたいズレていきます。そうなると、そのしわ寄せをすべて引き受けてなんとか事業が軌道に乗るまで我慢するのは経営者であり起業家になります。
こういうことが起こりがちである時に、自分の生活費がまったくカツカツの状況で起業してしまうと、来月の家賃の心配や、水道光熱費の支払いの遅延とか、、、生活の基盤を危うくするような状況がプライベートに起こってしまいます。新事業に全精力を傾けないといけない起業家が、プライベートの生活の基盤も危うくなると、危険です。
それでなくてもギリギリの状況で意思決定しているはずなのに、生活までギリギリになると冷静な判断をできなくなる可能性があります。日々判断して意思決定していくことが、起業家や経営者の大きな仕事です。しかしそれがままならない、、、とすると果たして新事業がウマくいくのでしょうか?
ビジネスにおける冷静な判断をするための脳みそを維持するためにも、あらかじめ生活そのもの不安は減少させておくことをオススメします。そのためには、経験則的ですが売上がある程度みててくるのには半年程度かかります。したがって、あなたの生活を維持するために必要な金額を6倍したものは銀行口座に残しておくことをオススメします。
家賃や水道光熱費で月15万円、食費まるっと月に5万円で月に20万円は必要なら6倍して120万円程度は生命維持費用として、別に確保しておくべきです。
「6ヶ月分はちょっと難しい」というなら、3か月分程度は最低でも確保しておいてください。3ヵ月だとまだ安定しきらない可能性が高いのですが、あるだけまだマシです。生活費分を確保しないでスタートすると本当に日々ヒヤヒヤし続けることになるので、多くの方にはお勧めできません。
そして、これ以外に事業上必要な資金を計算して確保することになります。事業を立ち上げて軌道に乗せるために必要な資金は、展開するビジネスによって全く違うのでいくらです、、、とは言えません。しかし、こちらのビジネスための資金は、ロジカルに考えて計算できさえすれば、それを元に銀行に相談することが可能です。
創業時には「創業融資」という制度もありますので、あなたが考えた事業でのお金の流れに説得力があれば、必要な資金を融資してもらえる可能性はあります。ここでも、新規ビジネスの事業計画が大切になります。
とにかく、起業しようと考えたら、手元の資金をゼロでスタートすることは多くの人にとっては、その判断力に影響を及ぼし、成功確率を著しく低める方向に影響します。それをどうやったら避けながら安定軌道に乗せることができるのかを、あらかじめきちんと考えておいてください。
あてのない状況で、銀行口座だけがどんどん減少していく状態に普通の精神状態で耐えられる経営者が結講すくないものです。