人は、未経験のことには警戒心を抱くものです。未開拓の市場に進出しようとしても、リスクのほうが大きく見えてしまいがちかもしれません。
一方で、リスクを顧みずいち早く参入したからこそ得られる利益があります。一代で企業を大きく成長させた起業家の多くは、リスクを恐れず市場に参入する勇気を持っていました。
こちらでは、起業を検討している方が未開拓市場に対してどういったイメージを抱いているのかアンケートで調査しました。また、先行して未開拓市場に進出することで得られるメリットについても深堀しています。
「未開拓な市場に先駆けて取り組むことのメリットとデメリット」はどちらが多い?
今回は起業を検討している30~50代の男性に対してアンケートを実施し、未開拓市場に関する一般的なイメージを調査しています。
メリットを感じている人が多い
最初にご紹介するのは、以下のアンケート結果です。
Q1.自分が起業するとき、未開拓な市場に先駆けて取り組むことは、メリット・デメリットどちらが大きいと思いますか?
■メリット 61%
■デメリット 39%
過半数以上のアンケート対象者が、未開拓市場に対してデメリット以上のメリットを感じています。
メリット・デメリットを選んだ理由は?
さらに、今回のアンケートでは以下の問いでそれぞれの選択肢を選んだ理由についても調査しています。
Q1の選択肢を選んだ理由、もしくは具体的なエピソードがあれば教えてください。
メリットを選んだ人のコメント
- 早ければ早いほど成功したときの報酬が多く手に入ることが多いからです。(「メリット」・32歳)
競合がいないからこそ、独占が可能であり、リターンが大きいと考えられています。
- 未開拓を不安と解釈することもできますが、やはり競合相手が居ないと捉えることが自然だから(「メリット」・49歳)
「競争相手がいない」ということを安全ととらえる意見も声もありました。
- 新しい分野を切り開くメリットは何ものにも勝ります。未開拓な市場だからこそ取り組むことに意義があり、成功の喜びも大きいです。(「メリット」・50歳)
誰も進出していない新しい分野に取り組むことに、意義や喜びを見出している方もいます。
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利益の大きさをメリットとして応えている方は、「成功」を前提条件として挙げています。また、「競合がいないこと」を「成功しやすい」というメリットの裏付けとして挙げている方もいます。意義や喜びをメリットとして掲げている方もいました。
デメリットを選んだ人のコメント
- 未開拓な市場は本当に需要が存在するのかどうか予想しにくいので、リスクの方が高いと思います。(「デメリット」・42歳)
未開拓市場のリスクはデメリットの理由として最も多い声です。
- 不安定な要素がつきまとうことと周囲の理解を得られないことがしばしばあります。(「デメリット」・30歳)
本人には確信があっても、周囲からの理解が得られないことがあります。
- 手本となるビジネスモデルを参考にカスタマイズすることが困難だから。(「デメリット」・39歳)
既存のモデルを参考にしたい方にとって、未開拓市場への参入は難しいかもしれません。
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「そもそも成功しないのでは?」という懸念からデメリットを選んでいるようです。また、「参考にできるモデルがない」という点からリスクがあるという意見もあります。
新しいビジネスを先駆けて行う者をファーストペンギンと呼ぶワケ
未開拓事業に飛び込む先行者は「ファーストペンギン」と呼ばれています。これは野生ペンギンの習性に由来する言葉です。
エサとなる魚が豊富な狩場を見つけたとしても、多くのペンギンは率先して飛び込もうとはしません。海面からは見えない外敵を警戒しての行動です。しかし、1匹のペンギンが勇気を出して飛び込むと、次々と他のペンギンも飛び込み始めます。
危険を承知で最初に海へと飛び込むペンギンになぞらえ、未開拓市場に参入する先行者をファーストペンギンと呼ぶようになりました。現在、各分野でシェアを独占している企業の多くはファーストペンギンだったと言えます。セカンドペンギン、サードペンギンとして成長した企業もありますが、やはりファーストペンギンほどのリターンは望めません。
上述したアンケートのコメントは、どれも起業を検討している方の意見として間違っているわけではありません。しかし、リスクを乗り越えて勇気を出した人だけが、ファーストペンギンになる資格を持っています。
ファーストペンギンのメリット・デメリット
以下ではファーストペンギンのメリットとデメリットをまとめてご紹介します。
メリット
ファーストペンギンになると以下のようなメリットがあります。これらは総じて「先行者利益」と呼ばれています。
・マーケットシェアをいち早く取れる
競合がいないため、必然的にその市場のマーケットシェアをいち早く独占することができます。もちろん、市場の可能性によってはセカンドペンギンやサードペンギンが参入してくることは否定できません。しかし、彼らはシェアを奪う立場です。すでにこちらがしっかりと握っているシェアを奪うのは、どの他企業にとっても簡単ではありません。つまり、ファーストペンギンとして成功すれば、マーケットの中で圧倒的優位に立てるということになります。
・マインドシェア(消費者内のブランドシェア率)を確保できる
ファーストペンギンになる大きなメリットのひとつが「マインドシェア」を確保できることです。マインドシェアとは「〇〇といえば、■■」といった一般的なイメージを獲得できること。マインドシェアが高いほど、日常生活の中で商品・サービスとして固有名詞が登場する頻度が多くなります。
・事例として扱われる恩恵
SNSやその他のWebメディアが普及している現在、注目に値する事例は自然と情報拡散されます。自身がコストをかけなくても勝手に拡散されるのですから、効果は強力です。ファーストペンギンの事例は、多くのメディアやSNSで取り上げられるでしょう。
デメリット
ファーストペンギンには以下のようなデメリットがあります。
・失敗するリスクが高い
ファーストペンギンには参考にできるモデルケースがありません。成功した場合の恩恵が大きい代わりに、開拓された市場に飛び込む場合以上に大きな失敗のリスクを覚悟する必要があります。
・その市場に本当に需要があるのか見きわめができない
過去にいくつかの起業家がファーストペンギンになろうとして、「需要がなさそうだ」と判断し思い直した可能性があります。市場が未開拓ということは、需要が未知数であることを意味します。
・苦労する可能性がある
ファーストペンギンが成功するまでには、前途多難な道のりが考えられます。未開拓市場ゆえに融資を受けるのに苦労するかもしれません。
ファーストペンギンの成功実例
以下では代表的なファーストペンギンの事例を2つご紹介しましょう。
朝ドラ「あさが来た」の主人公のモデル広岡浅子の成功事例
広岡浅子は明治時代に活躍した女性実業家です。当時はまだ新しかった炭鉱業に先んじて進出し、成功を収めました。生命保険会社や銀行、日本初の女子大の設立など、数々の分野へ先行者として参入しています。また、女性の社会的活躍がほとんどなかった時代という背景をふまえても、ファーストペンギンと呼ぶにふさわしい人物と言えるでしょう。彼女をモデルとしたNHKの朝ドラマ「あさが来た」では「ファーストペンギン」という言葉が登場しています。
楽天のベンチャースピリット
今や日本を代表するECサイトとなった楽天。代表である三木谷氏の決断は、都度注目を集めています。今日の楽天があるのは1997~2000年の日本のECサイト競争を勝ち残った結果です。
当時、三木谷氏が推し進めたのは「誰よりも速くEC戦国時代を走り抜けること」でした。結果として他のECサイトをしのぐスピード感で楽天は成長し、確かなブランドを築いています。「速く走り抜ける」という姿勢は、海外に目を向けるとAmazonやYahoo!などネットビジネスの大手が行っていた取り組みです。
ベンチャー企業だった楽天を巨大企業に成長させたのは、ファーストペンギンスピリットに他なりません。イノベーション企業、ベンチャー企業、スタートアップ時の企業が競争に勝ち残るためには、ファーストペンギンスピリットが必要と言えるでしょう。
ファーストペンギンになり先行者利益を得るためには
ファーストペンギンで成功すると得られる先行者利益の大きさは測り知れません。一方で、ファーストペンギンなるのは簡単ではないことも事実です。ファーストペンギンになるためには、どういった心構えが求められるのでしょうか?
ファーストペンギンになろうとしても、未開拓市場や未開拓分野を簡単に見つけることはできません。社会や業界全体にアンテナを張り巡らせ、ファーストペンギンになれる可能性を常に探すことが重要です。
また、未開拓のエリアを見つけたとしてもリスクを顧みて進出が遅れてしまうこともあります。初動力を上げ、着手のスピードを上げることが大切です。日常的に新しく何かを始めることに慣れておけば、初動力が向上します。
上述したファーストペンギンのメリットの多くは周りにファーストペンギンとして認識してもらうことで生まれます。後から「自分がファーストペンギンです」と言っても、理解を得られないかもしれません。そのため、自分でファーストペンギンであることを積極的に発信していくことも大切です。
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ファーストペンギンになることで多くのメリットを享受できます。現在の巨大企業の多くは、ファーストペンギンでした。アンケート結果からも、過半数以上の方がファーストペンギンとしてのメリットに魅力を感じています。
未開拓市場へいち早く参入しファーストペンギンになれれば、先行者利益を得られる確率が高まるでしょう。この点は、後発のセカンドペンギン・サードペンギンに対する大きなアドバンテージです。日常的にファーストペンギンになれるビジネスはないか意識して探すようにしましょう。
一方で、ファーストペンギンになることはリスクもあります。経営には細心の注意が必要です。そして、困難や苦労に立ち向かう確固たる意志の強さも求められます。
これから企業したいと考えている方は、勇気と慎重さを忘れずに、ファーストペンギンを目指してください。
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<調査概要>
調査対象:起業したいと考えている30~50代の男性に聞いた
有効回答者数:100名
調査方法:インターネットリサーチ
調査時期:2019年1月
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