起業するとき、起業者は、自分の描いた事業ビジョンを具体的な事業計画にまで落としこみ、投資家などから資金を調達し、実際のビジネスを始めることになります。
その際、資金をより多くかき集めることが必要になるため、株式会社などの会社組織を設立する形を取ることになります。
会社を設立することによって、社会的な信頼度が向上し、事業を運営しやすくなるなど、多くのメリットを享受できるため、会社を設立した上で、資金を調達します。
しかし、単に会社を設立しただけでは、誰も簡単に資金を提供してはくれません。
まとまった資金を投資してもらうためには、金融機関や公的機関、投資家などに対し、資金の捻出を検討してもらえるように、着実に勝てるビジネスプランや、将来拡大が見込まれる事業ビジョンを示し、しっかりと芯のある経営方針を掲げた会社であることが求められます。
経営方針を芯のある安定したものにするためには、その基盤となる経営理念の制定が必要になります。
多くの会社の場合、起業時の経営者には、事業ビジョンはある程度明確になっているものの、経営理念については、しっかり検討することは少ないのが、実情です。
仮に経営理念を制定している場合でも、事業ビジョンの延長に過ぎないような内容になっていることがあります。
時間のない中で作成するため、具体的なビジネス内容や、限られた事業分野の内容を経営理念の中に含めてしまうことがよくあります。
しかしながら、経営理念は、創業の原点であり、会社運営の基本方針であり、そして従業員の行動指針でもあります。
そのため、あるビジネスの内容のように、具体的な内容や限定した内容が経営理念に含まれていると、会社運営の中でビジネススタイルが変化した場合、経営理念と事業形態にギャップが生まれてしまうことになります。
それでは、経営理念という企業が向かおうとする方向が定まらなくなり、安定した経営を継続することが困難になります。
したがって、会社のビジネススタイルが変化したとしても、企業としての向かう方向が変わることのないような、普遍的な経営理念を制定することが、企業の経営にとっては重要になります。
それゆえに、経営理念は、会社の創業の目的を明文化したものであり、会社の理念ですから、哲学的な考え方や精神的な思想を表現することが求められます。
そういった観点で、会社が何をめざし、何のために存在しているかを改めて考えながら、経営理念を制定することで、太く長い企業活動を継続させることができるようになるでしょう。